僕と母さんと母さんの秘密(2) |
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| ※注意 読んでいい気分には決してならない小説モドキです、それでもよろしければどうぞお読みください。
ある日の授業参観に二人で一緒に来たことがあった。 僕の心臓は壊れるかと思うほどバクバクいっていた。そしてなるべく二人に気付かれないように体を縮め顔を下に向けた。 「なぁ!」 前に座っていた友達が興奮しながら僕の方を向いた。 「なに?」 顔を上げないように聞く。 「おかしなヤツだなぁ!緊張してるのか?てか見ろよ!後ろ!」 それでも僕は顔を上げなかった。そんな僕の顔を友達は無理やり後ろに向けた。 「右から六番目と七番目の母さん美人じゃね?」 初子母さんと倫子母さんだ!! 「誰の母さんかな~良いよな~俺の母さんデブで不細工だぜ。」 デブで不細工だろうと関係ない。僕はその時初めて普通の家庭に生まれたかったと思った。 偶然にも初子母さんと目が合ってしまって手を振ってきた。 どうしよう!!僕の人生滅茶苦茶だ!! 「お、え?あの人、お前の母さん?」 何も知らない友達が聞いてきた。もういいほっといてくれと思ったが、とりあえず頷いた。 「良いな~」 「僕はお前んちが羨ましいよ…」 つい心の声を口に出してしまった。驚いたあいつの顔は今でも忘れられない。 しかし授業が始まったことも終わったことも、内容自体何も覚えていなかった。それほどまで僕は二人の事で頭がいっぱいだったのだ。 授業が終わった後、二人が僕の方に来た。 それでも無視し続ける僕に初子母さんが「よう!」と話しかけてきた。 「何?」 二人の顔もろくに見ずに僕は言った。 「何だよ~授業参観の事なんで言わなかったの~?今日知って急いで来たんだよ?感謝しなさいよ。」 僕は中学生になった頃から授業参観など行事の時は二人に知らせないようにしていた。 「こんにちは、俺、秋矢の友達です!」 友達が会話に入ってきたものだから、もうこれ以上この場に居られなかった。逃げ出したかった。 「こんにちは、いつも秋矢がお世話になってます。ほら!秋矢、秋矢の友達の方がちゃんと挨拶できるじゃん!」と言われたが僕はそれどころではない。 「あの、なんで二人いるんですか?」 ついに来た!と思った。しかし倫子母さんはあっけらかんと 「私は秋矢のお母さんの妹なのよ。」 それが本当だったらどれほど嬉しかったか。しかし二人が僕の為に嘘をついていると知ったときも嬉しかった。 それからまた三年が経ち…僕は十六歳になった。 そこそこな学力だった僕はそこそこな県立高校に進学した。 初子さんと倫子さん(僕はある時から二人を“さん”で呼ぶようになった)はある程度大きくなった僕を置いてよく二人でデートに行っていた。僕は僕で二人を理解しグレずに育った。
つづく ――――――――――――――――――――――――――――――――――――
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12月18日(月)20:11 | トラックバック(0) | コメント(0) | 小説モルグ | 管理
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