セキララ絵日記
 
まるで駄目なグラフィックデザイナー見習い日記。
 



僕と母さんと母さんの秘密(4)

※注意
読んでいい気分には決してならない小説モドキです、それでもよろしければどうぞお読みください。

白血病が治った初子母さんは、まだ病院にいた倫子母さんのお見舞いに毎日行っていた。
明るく楽しい初子母さんの話を聞くのが何よりの楽しみだったという。
ところが、ある日の事だ…倫子母さんが誰にも会いたくないと言って初子母さんとも会わなくなったのだ。おかしいと思った初子母さんは無理矢理倫子母さんが押さえていたカーテンを引っ張った。
倫子母さんは泣きながら初子母さんに頼んだという。
「誰にも言わないで…お願い…私…妊娠してしまったの。」
それが僕だ。
5歳の時に両親を交通事故で亡くした倫子母さんは親戚の家にあずけられていた。その親戚は倫子母さんの両親の遺産が目当てで、元々体の弱かった母さんを病院に入れて、たまに来てお金を置いていくものの全くと言っていいほど関わろうとしなかった。
そんな倫子母さんは寂しさのあまり病院の医師と関わりをもってしまったのだ。

「馬鹿!!」
初子母さんは泣きながら倫子母さんの頬を叩いた。
「私がいたのに…私がいるのに…なんで私に言わなかったのよ!私はこれほどまで倫子を愛しているのに!」
倫子母さんは泣きながら、ただ謝って
「もう男の人なんて嫌い…ここから逃げたい…はっちゃんと一緒に…」
と言ったという。初子母さんはそれから倫子母さんと一緒に病院を出て二人で暮らし始めた。

倫子母さんは体が弱かったため子供を産むには難しかった。でも倫子母さんの強い意志で出産。皮肉なことに僕は二人の憎むべき男として生まれてしまった…

とうとう倒れてしまって弱弱しい息をする倫子母さんを見て僕は涙が出た。
仕事中にめまいで倒れてしまったがそうではない。

「倫子、お願い、元気になって…」
倫子母さんの手を握る初子母さんは祈るように呟いた。

僕さえ生まれてこなければ、倫子母さんは今も元気にいたかも知れない…
この二人の母さんよりも僕が生まれたことが、最もな不幸だと僕は思った。

「ごめんなさい…僕が、僕が生まれてこなければ…」

倫子母さんがゆっくり瞳を開いて
「大好きよ、秋矢…」
と、今にも消えそうな声で言った。

「ごめんなさい…」

僕は涙で何も見えなくなった、ただ彼女が優しく僕の手を握ってくれていた。

僕が倫子母さんの命を縮めた。

僕が倫子母さんを殺した。

僕が生まれてこなければ二人は今も幸せだったはずだ。

それでも倫子母さんは僕を愛してくれた。

僕のちっぽけな見栄で二人を一度でも僕の不幸だと思った事を深く後悔した。


倫子母さんは死んだ。
最後に何か呟いたが僕には聞こえないほど弱く小さかった。
葬式は静かに初子母さんと僕と、その場に居合わせた彼女とで執り行われた。

「初子母さん…ごめんね…僕のせいで…」

今、焼かれている倫子母さんを思う初子母さんの事を考えると謝るしかなかった。

「良かった…」

初子母さんは僕の手に自分の手を重ねた。

「え…?」

知らぬ間にまた涙が溢れ出ていた。

「秋矢が生まれてきて本当に良かった…」

「………」

「秋矢がいなかったら、私…」

「お母さん…」

父さんとか母さんとか、男とか女とか関係ないと思った。

ただ愛している。

それだけでいいじゃないか。

もう片方の手を彼女が握り締めた。

僕は不思議な空間で、不思議な気持ちで、改めで愛と幸せを感じた。


おわり

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
結構長くなってしまった…(´Д`;)
感想もらえると嬉しいです。



12月18日(月)20:15 | トラックバック(0) | コメント(0) | 小説モルグ | 管理

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