僕と母さんと母さんの秘密(3) |
|
| ※注意 読んでいい気分には決してならない小説モドキです、それでもよろしければどうぞお読みください。
しかし…授業参観以来の大事件が起きた。 はじめて彼女ができて、その彼女が僕の家族に会いたいと言うのだ。 「駄目だよ…僕んち汚いもん(実際は倫子さんが掃除をしていてかなり綺麗だった)」 「いいよ汚くても、私は秋矢君の家族に会ってみたいの。」 何でここまで言うのか僕には理解できなかった。別に付き合うくらいで結婚するわけでもないし… 「会ってどうするの?」 「会いたいの」 彼女に見つめられた。けど無理だ。最終手段を使うことにした。 「僕んち親父がいないから母さんが忙しいんだ。」 すると彼女は納得したのか 「じゃぁ、家に遊びに行ってもいい?」 と、聞いた。初子さんは働いてるから夕方までは帰ってこないし、倫子さんはパートである時間帯はいないから何とかなりそうだったので、それは了解した。 たまたま二人が仕事でいない時間があったので僕は彼女を家の中に入れた。 「綺麗だね、秋矢君ち。」 二人ともドキドキしていた。別に何するわけでも無いけど…キスくらいはするんじゃないかって内心思っていた。 彼女を僕の部屋に入れてジュースとお菓子を食べてテレビを観たり僕の部屋の本やらを見ていた。 「お母さん?」 しまい忘れた三人の写真を彼女が見つけて聞いてきた。 「うん…」 「どっちがお母さん?」 「えっと髪の短い方。」 「ふーん…やっぱりお母さんも綺麗な顔しているね」 嬉しいような複雑な気分だった。実際どっちが僕を産んだのか僕は知らない。 すると階段から誰かが上がってくる音がした。しかもかなり急いでいるようだった。僕は慌てて彼女を布団の中に隠れさせた。 ドアが開くと、そこには初子さんがいた。 「秋矢っ!みーが!倫子が!!」 泣きながら顔を真っ赤にさせ息を切らしながら初子さんは言った。 「倫子母さんがどうしたの!?」 僕は彼女がいることも忘れて聞いてしまった。彼女は起き上がりおどおどしていた。 「お願い!!二人とも一緒に来て!!お願い!!」 初めてと言ってもいい。多分、初めて僕は初子母さんに頼りにされた。 車に乗り込むと初子母さんが 「秋矢には言わなかったんだけど、私、小さい頃に白血病になって子供の産めない体になったの…。」 僕は驚いたが、それ以上に隣に乗っていた彼女が動揺し驚いていた。 「それで、その時病室で出会ったのが倫子なのよ…」 泣きながら運転していた初子母さんは手が震えていた。
つづく
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
| |
|
12月18日(月)20:13 | トラックバック(0) | コメント(0) | 小説モルグ | 管理
|
僕と母さんと母さんの秘密(2) |
|
| ※注意 読んでいい気分には決してならない小説モドキです、それでもよろしければどうぞお読みください。
ある日の授業参観に二人で一緒に来たことがあった。 僕の心臓は壊れるかと思うほどバクバクいっていた。そしてなるべく二人に気付かれないように体を縮め顔を下に向けた。 「なぁ!」 前に座っていた友達が興奮しながら僕の方を向いた。 「なに?」 顔を上げないように聞く。 「おかしなヤツだなぁ!緊張してるのか?てか見ろよ!後ろ!」 それでも僕は顔を上げなかった。そんな僕の顔を友達は無理やり後ろに向けた。 「右から六番目と七番目の母さん美人じゃね?」 初子母さんと倫子母さんだ!! 「誰の母さんかな~良いよな~俺の母さんデブで不細工だぜ。」 デブで不細工だろうと関係ない。僕はその時初めて普通の家庭に生まれたかったと思った。 偶然にも初子母さんと目が合ってしまって手を振ってきた。 どうしよう!!僕の人生滅茶苦茶だ!! 「お、え?あの人、お前の母さん?」 何も知らない友達が聞いてきた。もういいほっといてくれと思ったが、とりあえず頷いた。 「良いな~」 「僕はお前んちが羨ましいよ…」 つい心の声を口に出してしまった。驚いたあいつの顔は今でも忘れられない。 しかし授業が始まったことも終わったことも、内容自体何も覚えていなかった。それほどまで僕は二人の事で頭がいっぱいだったのだ。 授業が終わった後、二人が僕の方に来た。 それでも無視し続ける僕に初子母さんが「よう!」と話しかけてきた。 「何?」 二人の顔もろくに見ずに僕は言った。 「何だよ~授業参観の事なんで言わなかったの~?今日知って急いで来たんだよ?感謝しなさいよ。」 僕は中学生になった頃から授業参観など行事の時は二人に知らせないようにしていた。 「こんにちは、俺、秋矢の友達です!」 友達が会話に入ってきたものだから、もうこれ以上この場に居られなかった。逃げ出したかった。 「こんにちは、いつも秋矢がお世話になってます。ほら!秋矢、秋矢の友達の方がちゃんと挨拶できるじゃん!」と言われたが僕はそれどころではない。 「あの、なんで二人いるんですか?」 ついに来た!と思った。しかし倫子母さんはあっけらかんと 「私は秋矢のお母さんの妹なのよ。」 それが本当だったらどれほど嬉しかったか。しかし二人が僕の為に嘘をついていると知ったときも嬉しかった。 それからまた三年が経ち…僕は十六歳になった。 そこそこな学力だった僕はそこそこな県立高校に進学した。 初子さんと倫子さん(僕はある時から二人を“さん”で呼ぶようになった)はある程度大きくなった僕を置いてよく二人でデートに行っていた。僕は僕で二人を理解しグレずに育った。
つづく ――――――――――――――――――――――――――――――――――――
| |
|
12月18日(月)20:11 | トラックバック(0) | コメント(0) | 小説モルグ | 管理
|
僕と母さんと母さんの秘密(1) |
|
| ※注意 読んでいい気分には決してならない小説モドキです、それでもよろしければどうぞお読みください。
僕には父さんがいない。生まれた時から母さんしかいなかった。 他の家族と少し違うのはここからだ… 僕には母さんが二人いるのだ。 “初子”母さんはさっぱりしていて男らしい。髪はショートカットでこれまた男らしいが話しやすく明るい性格だ。 “倫子”母さんは料理が得意で優しくて僕が言うのもなんだが綺麗だ。 僕は物心付いた時から、他の家族と少し違うことに気付いていた。否、気付かない方がおかしい。 初子母さんと倫子母さんはレズビアンなのだ。 それをはじめて本人たちから聞いたのは小学校四年生の時だった。友達に母さんが二人いると言ったらおかしいと言われ喧嘩した事を二人に言ったのだ。 「別にいいじゃない!二人いようと何人居ようと!どっかの国だと多妻一夫とか言って旦那一人に妻大勢とかわけ分かんない所もあんのよ!」 初子母さんは怒りを友達にではなく僕に向けた。しかし初子母さんの言っていることはいつも僕には理解できなかった。 「ねぇ、はっちゃん(倫子母さんは初子母さんの事を“はっちゃん”と呼ぶ)秋矢(ちなみに僕の名前)ももう四年生だし…本当の事を言っても良い時期じゃないかしら…」 「本当の事って?」 初子母さんがうーんと唸っていた。 「ねぇ、本当の事って?」 「五月蝿いねぇ~ちょっと黙ってなよ」 「はっちゃん!」 倫子母さんがフォローに入る。 「秋矢も気付いているかも知れないけど…ウチってちょっと他の家と違うじゃん?」 頬杖しながら口を尖らせて初子母さんは言った。 「うん。」 「ほら、他の家ってお父さんとお母さんが一人ずついるわけじゃん?まぁ、たまにどっちか居ない家族もいるけどさ、でもウチはお母さんが二人って変わっているよね。」 「うん。」 あまりに僕が真剣に聞いてるもんだから初子母さんは言いにくくなったのかまた唸りだした。 「みー(初子母さんは倫子母さんの事を“みー”と呼ぶ)助けてーどうしよーこの頃の男の子に言うのって難しいよ~」 「大丈夫よ、今言わないときっと秋矢グレちゃうよ。今の内に言っておこうよ。」 意味が分からなかった。母さんたちは僕に相当な隠し事をしているのか!とショックを受けていた。 当時の僕が男と女がいないと子供が生まれないなんて知ってるわけも無かったし。ただ、僕は二人の言葉を待っていた。 「要するに、みー母さんと私は、愛し合っているのよ!」 「うん。」 当たり前のことを言われたとの僕は内心ほっとした。 それがレズビアンだと気付くのには、それほど時間はかからなかった… 中学校に通いはじめた僕の友達はエロ本をたくさん持っていて学校に持ってきては隠れてみんなで回し読みをしていた。その本で知ったのだ。 「すげぇよな~女同士って…」 「うん…」 僕はそれ以上何も言えなかった…まさか今、この場で“すげぇ”と言われたのが母さんたちとは… そして、その時思った。母さんたちのことは誰にも知られてはいけないと。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――― サイト上の関係で一気に更新できないのが残念。 秋矢が大きくなるにつれての二人の母親への思いが変わっていくのを見てもらいたいです。
| |
|
12月18日(月)20:08 | トラックバック(0) | コメント(1) | 小説モルグ | 管理
|
イルカは死のかおり |
|
| ※注意 読んでいい気分には決してならない小説モドキです、それでもよろしければどうぞお読みください。
この、“死”をかおりにしたような臭いは何処から流れてくるのだろう…
胸くそ悪くなり吐気もする
僕は海辺をただ、歩いていた。行く当ては無い。 恋人が死んで僕は死に場所を探しているだけなのだから… 僕も死んだらこんなにおいがするのだろうか?
においが強い方へと足が向かう。
「やぁ、お兄さんもこのかおりにつられて来たんだね!?」 手拭いを頭に巻いた見るからに人の良さそうな老人が言った。 「否、ただ強烈なにおいがしたもので」 僕は微笑んでみた
「これはこれは、お若いのによく。」 意味しんに老人は言う。 「なに、イルカを煮ていたのだよ。」
「イルカ!?イルカを食うんですか?!」 何て野蛮なんだ…。僕は声には出さなかったがそれしか思わなかった。
「食ってみるかい?」 老人は静かに異様な臭いを放つイルカの肉を僕の前に向けた。
「いや…」 僕は、その臭いにめまいがした。 「美味しいから…嘘だと思って食べてみなさい。」 ゆっくり手を差し出すと老人は、その掌にイルカの肉を乗せた。
恐る恐る口の中に運ぶと口いっぱいに“死”のかおりが広がり僕の鼻から抜けていき、身体中に広がり、それが又数えきれない程の毛穴から抜けていくようだった。
「まったく…これだからイルカは嫌なんだよ。」 鍋を持ちながら老人は海から離れて行く。 その後ろから何人かの透けている人々がぞわぞわと付いてくる。 「イルカは本当に美味いから癖になるけど、こんなんじゃぁたまにしか食えないね。」 ブツブツと長靴を鳴らしながら老人は家路に向かう…
ザザン…ザザン…
波が静かに追い掛け 老人は鍋に蓋をした。
「イルカは“死”のかおりがするから集まるのさ。」
ザザン…ザザン…
波は静かに追い掛ける。
おわり ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― PCが壊れている間暇だったのでケータイで書いてた話。 イルカ…においもくさいし食べられません… あのにおいを嗅いでいると何か変なものが寄ってくる気がします(´∀`)
| |
|
12月6日(水)20:10 | トラックバック(0) | コメント(0) | 小説モルグ | 管理
|
生と死と…(後編) |
|
| ※注意 読んでいい気分には決してならない小説モドキです、それでもよろしければどうぞお読みください。
目が覚めると天国。 何もかも真っ白で…真っ白が天国で…。
左手が温かかった
「可南子…」
嗚呼…
「可南子…可南子…」
お兄ちゃん…
不思議と涙がこぼれていた。
私…生きてる…
「可南子…?」
なんで、私は生きているの?
「なんで」
「なんで…お兄ちゃん、私を置いていくの…?」
生まれた時から私はお兄ちゃんしか見ていなかったのに… お兄ちゃんは私だけじゃない… 私の存在価値はお兄ちゃん一人だけだったのに…
涙が止まらない。
「置いていかないで…」 声にならない言葉を塞ぐようにお兄ちゃんが私にキスをした。
「置いていかないよ、大丈夫。」
私が死にたかった理由は、実の兄妹なのにその兄を好きになってしまった自分が汚らわしいと思っていたから… 生きたかった理由は、お兄ちゃんがいつもそばにいてくれたから… そんな自分の気持ちが許せなかったから… お兄ちゃんがいなくなるくらいなら死んだ方がましだと思ったから…
「ごめんね、私、お兄ちゃんの事が好きだった…ずっと好きだった…ごめんね…ごめんね…生きててごめんね…」
この世界に生れ落ちた瞬間から私はお兄ちゃんしか見ていなかった。
「何、言ってるんだよ…」
「ごめんね…お兄ちゃん…」
「クスリ、吐かせたの僕なんだ…可南子には生きていてほしいよ…一緒に…生きていてほしい…死なないで…」
「でも…私…」
お兄ちゃんは私の腕の点滴の針を抜き、私を抱き上げ病室を出た。
今、私の世界はお兄ちゃんしか存在しない… お兄ちゃんしか見えない… 他のものなんて何も見えないし聞こえもしない…
どこでも良い
天国でも地獄でも…
生きても…死んでも…
二人一緒なら…
おわり ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― いろいろ資料を集めましたが、自殺をテーマに書いてみたいと思っていました。 拙く下手糞な文章ですが、最後に何か考えさせられる話がかきたかったのです。 そして、歪んでいるのに純粋な愛も書きたかったのです。 資料は“完全自殺マニュアル”という本です。
何か感じたことがある方は一言もらえるとうれしいです。
| |
|
12月3日(日)00:46 | トラックバック(0) | コメント(3) | 小説モルグ | 管理
|