セキララ絵日記
 
まるで駄目なグラフィックデザイナー見習い日記。
 



2006年12月18日を表示

僕と母さんと母さんの秘密(4)

※注意
読んでいい気分には決してならない小説モドキです、それでもよろしければどうぞお読みください。

白血病が治った初子母さんは、まだ病院にいた倫子母さんのお見舞いに毎日行っていた。
明るく楽しい初子母さんの話を聞くのが何よりの楽しみだったという。
ところが、ある日の事だ…倫子母さんが誰にも会いたくないと言って初子母さんとも会わなくなったのだ。おかしいと思った初子母さんは無理矢理倫子母さんが押さえていたカーテンを引っ張った。
倫子母さんは泣きながら初子母さんに頼んだという。
「誰にも言わないで…お願い…私…妊娠してしまったの。」
それが僕だ。
5歳の時に両親を交通事故で亡くした倫子母さんは親戚の家にあずけられていた。その親戚は倫子母さんの両親の遺産が目当てで、元々体の弱かった母さんを病院に入れて、たまに来てお金を置いていくものの全くと言っていいほど関わろうとしなかった。
そんな倫子母さんは寂しさのあまり病院の医師と関わりをもってしまったのだ。

「馬鹿!!」
初子母さんは泣きながら倫子母さんの頬を叩いた。
「私がいたのに…私がいるのに…なんで私に言わなかったのよ!私はこれほどまで倫子を愛しているのに!」
倫子母さんは泣きながら、ただ謝って
「もう男の人なんて嫌い…ここから逃げたい…はっちゃんと一緒に…」
と言ったという。初子母さんはそれから倫子母さんと一緒に病院を出て二人で暮らし始めた。

倫子母さんは体が弱かったため子供を産むには難しかった。でも倫子母さんの強い意志で出産。皮肉なことに僕は二人の憎むべき男として生まれてしまった…

とうとう倒れてしまって弱弱しい息をする倫子母さんを見て僕は涙が出た。
仕事中にめまいで倒れてしまったがそうではない。

「倫子、お願い、元気になって…」
倫子母さんの手を握る初子母さんは祈るように呟いた。

僕さえ生まれてこなければ、倫子母さんは今も元気にいたかも知れない…
この二人の母さんよりも僕が生まれたことが、最もな不幸だと僕は思った。

「ごめんなさい…僕が、僕が生まれてこなければ…」

倫子母さんがゆっくり瞳を開いて
「大好きよ、秋矢…」
と、今にも消えそうな声で言った。

「ごめんなさい…」

僕は涙で何も見えなくなった、ただ彼女が優しく僕の手を握ってくれていた。

僕が倫子母さんの命を縮めた。

僕が倫子母さんを殺した。

僕が生まれてこなければ二人は今も幸せだったはずだ。

それでも倫子母さんは僕を愛してくれた。

僕のちっぽけな見栄で二人を一度でも僕の不幸だと思った事を深く後悔した。


倫子母さんは死んだ。
最後に何か呟いたが僕には聞こえないほど弱く小さかった。
葬式は静かに初子母さんと僕と、その場に居合わせた彼女とで執り行われた。

「初子母さん…ごめんね…僕のせいで…」

今、焼かれている倫子母さんを思う初子母さんの事を考えると謝るしかなかった。

「良かった…」

初子母さんは僕の手に自分の手を重ねた。

「え…?」

知らぬ間にまた涙が溢れ出ていた。

「秋矢が生まれてきて本当に良かった…」

「………」

「秋矢がいなかったら、私…」

「お母さん…」

父さんとか母さんとか、男とか女とか関係ないと思った。

ただ愛している。

それだけでいいじゃないか。

もう片方の手を彼女が握り締めた。

僕は不思議な空間で、不思議な気持ちで、改めで愛と幸せを感じた。


おわり

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結構長くなってしまった…(´Д`;)
感想もらえると嬉しいです。



12月18日(月)20:15 | トラックバック(0) | コメント(0) | 小説モルグ | 管理

僕と母さんと母さんの秘密(3)

※注意
読んでいい気分には決してならない小説モドキです、それでもよろしければどうぞお読みください。

しかし…授業参観以来の大事件が起きた。
はじめて彼女ができて、その彼女が僕の家族に会いたいと言うのだ。
「駄目だよ…僕んち汚いもん(実際は倫子さんが掃除をしていてかなり綺麗だった)」
「いいよ汚くても、私は秋矢君の家族に会ってみたいの。」
何でここまで言うのか僕には理解できなかった。別に付き合うくらいで結婚するわけでもないし…
「会ってどうするの?」

「会いたいの」

彼女に見つめられた。けど無理だ。最終手段を使うことにした。
「僕んち親父がいないから母さんが忙しいんだ。」
すると彼女は納得したのか
「じゃぁ、家に遊びに行ってもいい?」
と、聞いた。初子さんは働いてるから夕方までは帰ってこないし、倫子さんはパートである時間帯はいないから何とかなりそうだったので、それは了解した。

たまたま二人が仕事でいない時間があったので僕は彼女を家の中に入れた。
「綺麗だね、秋矢君ち。」
二人ともドキドキしていた。別に何するわけでも無いけど…キスくらいはするんじゃないかって内心思っていた。
彼女を僕の部屋に入れてジュースとお菓子を食べてテレビを観たり僕の部屋の本やらを見ていた。

「お母さん?」
しまい忘れた三人の写真を彼女が見つけて聞いてきた。

「うん…」
「どっちがお母さん?」
「えっと髪の短い方。」
「ふーん…やっぱりお母さんも綺麗な顔しているね」

嬉しいような複雑な気分だった。実際どっちが僕を産んだのか僕は知らない。

すると階段から誰かが上がってくる音がした。しかもかなり急いでいるようだった。僕は慌てて彼女を布団の中に隠れさせた。

ドアが開くと、そこには初子さんがいた。

「秋矢っ!みーが!倫子が!!」
泣きながら顔を真っ赤にさせ息を切らしながら初子さんは言った。

「倫子母さんがどうしたの!?」
僕は彼女がいることも忘れて聞いてしまった。彼女は起き上がりおどおどしていた。
「お願い!!二人とも一緒に来て!!お願い!!」

初めてと言ってもいい。多分、初めて僕は初子母さんに頼りにされた。

車に乗り込むと初子母さんが
「秋矢には言わなかったんだけど、私、小さい頃に白血病になって子供の産めない体になったの…。」
僕は驚いたが、それ以上に隣に乗っていた彼女が動揺し驚いていた。
「それで、その時病室で出会ったのが倫子なのよ…」
泣きながら運転していた初子母さんは手が震えていた。


つづく

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12月18日(月)20:13 | トラックバック(0) | コメント(0) | 小説モルグ | 管理

僕と母さんと母さんの秘密(2)

※注意
読んでいい気分には決してならない小説モドキです、それでもよろしければどうぞお読みください。


ある日の授業参観に二人で一緒に来たことがあった。
僕の心臓は壊れるかと思うほどバクバクいっていた。そしてなるべく二人に気付かれないように体を縮め顔を下に向けた。
「なぁ!」
前に座っていた友達が興奮しながら僕の方を向いた。
「なに?」
顔を上げないように聞く。
「おかしなヤツだなぁ!緊張してるのか?てか見ろよ!後ろ!」
それでも僕は顔を上げなかった。そんな僕の顔を友達は無理やり後ろに向けた。
「右から六番目と七番目の母さん美人じゃね?」

初子母さんと倫子母さんだ!!

「誰の母さんかな~良いよな~俺の母さんデブで不細工だぜ。」

デブで不細工だろうと関係ない。僕はその時初めて普通の家庭に生まれたかったと思った。
偶然にも初子母さんと目が合ってしまって手を振ってきた。

どうしよう!!僕の人生滅茶苦茶だ!!

「お、え?あの人、お前の母さん?」
何も知らない友達が聞いてきた。もういいほっといてくれと思ったが、とりあえず頷いた。
「良いな~」
「僕はお前んちが羨ましいよ…」
つい心の声を口に出してしまった。驚いたあいつの顔は今でも忘れられない。
しかし授業が始まったことも終わったことも、内容自体何も覚えていなかった。それほどまで僕は二人の事で頭がいっぱいだったのだ。

授業が終わった後、二人が僕の方に来た。
それでも無視し続ける僕に初子母さんが「よう!」と話しかけてきた。

「何?」
二人の顔もろくに見ずに僕は言った。
「何だよ~授業参観の事なんで言わなかったの~?今日知って急いで来たんだよ?感謝しなさいよ。」
僕は中学生になった頃から授業参観など行事の時は二人に知らせないようにしていた。
「こんにちは、俺、秋矢の友達です!」
友達が会話に入ってきたものだから、もうこれ以上この場に居られなかった。逃げ出したかった。
「こんにちは、いつも秋矢がお世話になってます。ほら!秋矢、秋矢の友達の方がちゃんと挨拶できるじゃん!」と言われたが僕はそれどころではない。

「あの、なんで二人いるんですか?」

ついに来た!と思った。しかし倫子母さんはあっけらかんと
「私は秋矢のお母さんの妹なのよ。」
それが本当だったらどれほど嬉しかったか。しかし二人が僕の為に嘘をついていると知ったときも嬉しかった。

それからまた三年が経ち…僕は十六歳になった。
そこそこな学力だった僕はそこそこな県立高校に進学した。
初子さんと倫子さん(僕はある時から二人を“さん”で呼ぶようになった)はある程度大きくなった僕を置いてよく二人でデートに行っていた。僕は僕で二人を理解しグレずに育った。


つづく
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12月18日(月)20:11 | トラックバック(0) | コメント(0) | 小説モルグ | 管理

僕と母さんと母さんの秘密(1)

※注意
読んでいい気分には決してならない小説モドキです、それでもよろしければどうぞお読みください。


僕には父さんがいない。生まれた時から母さんしかいなかった。
他の家族と少し違うのはここからだ…

僕には母さんが二人いるのだ。

“初子”母さんはさっぱりしていて男らしい。髪はショートカットでこれまた男らしいが話しやすく明るい性格だ。
“倫子”母さんは料理が得意で優しくて僕が言うのもなんだが綺麗だ。
僕は物心付いた時から、他の家族と少し違うことに気付いていた。否、気付かない方がおかしい。

初子母さんと倫子母さんはレズビアンなのだ。

それをはじめて本人たちから聞いたのは小学校四年生の時だった。友達に母さんが二人いると言ったらおかしいと言われ喧嘩した事を二人に言ったのだ。

「別にいいじゃない!二人いようと何人居ようと!どっかの国だと多妻一夫とか言って旦那一人に妻大勢とかわけ分かんない所もあんのよ!」
初子母さんは怒りを友達にではなく僕に向けた。しかし初子母さんの言っていることはいつも僕には理解できなかった。
「ねぇ、はっちゃん(倫子母さんは初子母さんの事を“はっちゃん”と呼ぶ)秋矢(ちなみに僕の名前)ももう四年生だし…本当の事を言っても良い時期じゃないかしら…」

「本当の事って?」

初子母さんがうーんと唸っていた。

「ねぇ、本当の事って?」
「五月蝿いねぇ~ちょっと黙ってなよ」
「はっちゃん!」
倫子母さんがフォローに入る。

「秋矢も気付いているかも知れないけど…ウチってちょっと他の家と違うじゃん?」
頬杖しながら口を尖らせて初子母さんは言った。
「うん。」
「ほら、他の家ってお父さんとお母さんが一人ずついるわけじゃん?まぁ、たまにどっちか居ない家族もいるけどさ、でもウチはお母さんが二人って変わっているよね。」
「うん。」

あまりに僕が真剣に聞いてるもんだから初子母さんは言いにくくなったのかまた唸りだした。

「みー(初子母さんは倫子母さんの事を“みー”と呼ぶ)助けてーどうしよーこの頃の男の子に言うのって難しいよ~」
「大丈夫よ、今言わないときっと秋矢グレちゃうよ。今の内に言っておこうよ。」

意味が分からなかった。母さんたちは僕に相当な隠し事をしているのか!とショックを受けていた。
当時の僕が男と女がいないと子供が生まれないなんて知ってるわけも無かったし。ただ、僕は二人の言葉を待っていた。

「要するに、みー母さんと私は、愛し合っているのよ!」

「うん。」

当たり前のことを言われたとの僕は内心ほっとした。

それがレズビアンだと気付くのには、それほど時間はかからなかった…
中学校に通いはじめた僕の友達はエロ本をたくさん持っていて学校に持ってきては隠れてみんなで回し読みをしていた。その本で知ったのだ。
「すげぇよな~女同士って…」
「うん…」
僕はそれ以上何も言えなかった…まさか今、この場で“すげぇ”と言われたのが母さんたちとは…
そして、その時思った。母さんたちのことは誰にも知られてはいけないと。



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サイト上の関係で一気に更新できないのが残念。
秋矢が大きくなるにつれての二人の母親への思いが変わっていくのを見てもらいたいです。



12月18日(月)20:08 | トラックバック(0) | コメント(1) | 小説モルグ | 管理


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